東方SSもどき 東方此彼紀とうほうこれかれき 〜round and round lotus land〜
                                              小説ページへ TOPへ


1面:三途の川 〜a flower is....〜
2面:裁判開廷 〜you have no....〜
3面:幻想郷上空 〜Kick the bullet〜
4面:白玉楼 〜Clear for takeoff 〜
5面:永遠亭 〜 Let's experiment 〜
6面A:マヨヒガ 〜play! play!! play!!〜
6面B:紅魔館 〜Call Me MEEEEERIN!!!!〜
EX:香霖堂〜search and assemble〜
PH:搏麗神社〜 UTAGE 〜



**** 小町船頭小話 ****


 花の異変で巫女たちが四季映姫の所へやって来てからしばらく経ったある日。

 小町はいつものように船渡しの仕事をやっていた。
 サボタージュの泰斗とか言われているけれど、ちゃんと仕事はやっているのである。
 ・・・やっぱり彼女が「こうするのが一番仕事の効率が良い」と主張する『適度な休憩をはさみつつ』ではあるのだが。

 いつものように船頭をしながら客との話を楽しむのであった、


小町「なんか辛気臭いけど、死んじまったのがそんなに残念なのかい?」

幽霊「死んだ事はそうでもないかな。お迎えが近そうだとはなんとなく気付いてたから。
   ただやっぱり、今までよりもっと苦しい『地獄』が待っていると思うと、ちょっと。」

 今回の客は、けっこう若いうちに亡くなった霊のようだった。
 幽霊はみんな外見上『冷たいお餅みたいなの』だから
 小町は生前の外見については大して興味がないのだが。

小町「三途の川を渡ってる最中に自分で地獄行き確定だって思う人は大抵
   本当に大悪党だった人か単に加減が分かってない人なんだけど、
   お客さんはどっちなんだろうね」

幽霊「う〜ん、どっちなんだろう。私は悪い事をしてきたと思うけれど、
   やっぱり閻魔様に聞くしかないのかな」

小町「・・・お客さん、外の世界で何やらかしたんだい?」

幽霊「『何もやらかせなかった』んだよ。」


 話を聞くに、今回のお客は寺子屋の弟子みたいな事をしている内に病気になって、その後ずっと他の人の助けで生きていたとの事。

 そういうタイヘンな人を助けてくれる制度が外の世界にはあるのだとお客は言っているのだが、説明の仕方が悪かったのか、小町が感心した顔で返した言葉は、
 「お国総出で食わせてくれてたなんて、どこのお姫様だ?」だった。

小町「――で、稼いでなかった事が地獄行き確定な理由?」

 つめたいお餅がぽよりと頷いていた。
 お客は花の異変のときに地獄の沙汰も金次第・・・生きていた間に清く正しく稼いだお金が必要なのだと聞いたらしい。

 小町がもらった未だによくわかっていない通貨で出来た三途の川の渡し賃をじゃらりと確認してみるが・・・普通だったりする。

小町「このお金の単位って『えん』だっけ?」

幽霊「そだよ〜」

小町「漢字で何? 『宴』?」

幽霊「景気良さそうな字だなー。その字にすればいいのに」


 多少の早とちりはあったけど、話してみてなんとなく小町は気付きはじめていた。

 早とちりしているのはお互いさまなのだ。

小町「お客さん、ちょっと勘違いしてるよ。確かに地獄の沙汰も金次第だ。
   よく稼いだ人は『身内の渡し賃を』稼いでる。
   だけど、稼いだりもらったりしたお金を『どう使ったか』だって
   地獄の沙汰のお金の内なんだよ。
   うまく使ってればあんたが貰った身内のお金は身内の渡し賃。
   その身内がお金をうまく使えてたならあんたの渡し賃。」

幽霊「なんか、つむじがムズムズするくらい難しいような・・・?」

小町「そうでもないよ。金は天下の回り物。自分の金額も
   身内の金額も似たり寄ったりに成るもんだ。」

 なんとなく自分の上司・四季に成ったような気分で小町は説教?を始めていた。
 いくら清く正しくお金をたくさん稼いでいても、
 そのたくさんのお金を使って人様に迷惑をかけたら悪い事に成る。

 たとえば、大規模な宴会を莫大な費用をかけて開いても、たくさんの人にイヤな思いをさせるつまらない宴会にしたらそれは悪いことだ。
 逆に、人のおごりで宴会に出ても、
 美味く楽しく呑んだり呑ませたりしたらそれは多少はいいことだ。

 楽しく呑めるならもう一回宴会を開きたいなー、行きたいなーと思える。
 だから『身内』は増えて行って身内単位での三途の川の渡し賃は増える。

 何回やっても辛気くて不味い酒に成るようなら、いずれ宴会は開かれなく成る。
 開いても誰も来なくなる。
 宴会をやらなければ当然酒代は支払われないから経済も酔いも回らない。
 身内も増えない。むしろ減る。だから三途の川の渡し賃が減る。

 身内とはつまり、宴会で「いつものあいつ」と呼べる人だ。
 三途の川の渡し賃の計算方法は酔っぱらいの大雑把な割り勘みたいなもの。
 自分で払おうが他人が払おうが、どっちにしろムダにしたならそれは悪い。
 自分で払おうが他人が払おうが、どっちにしろ美味にしたならそれは良い。

 お客さんは酒代を払わなくても宴会の席の身内を増やすか減らすかしてたんだよ。
 たぶん増やしてた。

 とかなんとか。

小町「酒代を出していい宴会にした人が一番良いやつだけど、
   その酒を無駄にしなかったお客さんも良いやつなんだ。
   あーでも、お客さんが酒代せびりすぎてたら四季さま怒るかなー。
   まぁ、せびり始めると乞食と同じで煙たがられるからそれは無さそーだけど」

 さっきからずっと稼ぎの話が酒代の話にすり替わっているのだが、
 小町の言わんとしているところはお客も多少は分かったのかもしれない。

幽霊「せびらずにありがたく呑んで景気よく回したつもりなんだけどねー。
    上手く呑めていたのかどうかは私には分かりづらいかな。
    ――もうそろそろみたいだね? 彼岸(むこうぎし)」

 見れば彼岸はすぐそこだった。

小町「あれま。けっこう早かったなー。
    もうちょっと聞いてみたかったんだけど。
    特に外の世界のお酒の話。」

 ちょっと残念に思いつつ、なんだかんだで話が弾んでいた事に気付いた小町は
 彼岸に船を止めて、桟橋へ行こうとするお客へ最後に聞いてみる事にした。

小町「お客さん、この間の騒動で花に成ってたんじゃない? たぶんその花は――」

幽霊「傘をさした花畑のお嬢さんをぶっ飛ばした巫女が
    『枯れるなら、ツマミにしよう、このタネを』
    なんて詠ったりしたから逃げてきたんだよ。またね〜」

 今生の別れのさらに後で、「またね」も何もないのかもしれないが、
 単にあの花がちょっと元気をなくしていた程度だったのなら、
 そういうのんきで陽気な台詞も出るのかもしれない。

 そんな季節外れの夏の空気に当てられたのか、

小町「生まれ変わったらまた会うかもね。それじゃまた〜」

 小町もまたのんきに手を振るのだった。


**** 地獄道中記? ****


四季「あなたはちょっとの事で落ち込み易すぎる。なのに普段はおっとりしすぎる。
    お喋りを延々と続けすぎる。思い込みが激しすぎる。早とちりしすぎる。
    病気になり易すぎる。ただ酒を飲みすぎる。仕事が出来なすぎる。
    (中略)
    平常心が足りない。一貫性が足りない。客観性が足りない。
    肝が据わってない、冷静さがない。健康運がない。直接収入がない。
    そして何より――速さが足りない!!」


四季「ぜーはー、ぜーはー。このくらいでいいでしょう。
    判決は血の池地獄〜。血の池地獄〜」

幽霊「やっぱり地獄行きだったかー」

 四季の、弾幕にも似た説教の嵐に長々と晒されて、
 「もうそれでいいや」と思っちゃってる幽霊だった。

四季「ホントはここで鬼(獄卒)に地獄へ放り込んでもらうわけだけど・・・
   幻想郷に鬼は居ないし。居てもあの呑んだくれだし。
   なので私が案内します。」

幽霊「うぅ、恐縮っすー」

 四季が裁判長の席を降りて、「こっちへ来なさい」と法廷裏手へ向かうドアから手招きしている。

 誘導にならってそのドアを潜ると――長い廊下があった。

 廊下の脇にいくつも部屋があるようで、それぞれ掛札がかかっている。

 そんな廊下の札には「針山地獄」「無間地獄」「八熱地獄」などなど・・・

 そしてありました。「血の池地獄」

四季「ここへ入ってもらうから。」

幽霊「は〜い」

 がらりとドアを開けると・・・やはりというべきか、地獄はそこにあった。

 錆びたような臭いはやはり血だ。


幽霊「ちょっと入りづらいデスネ・・・」

四季「入りなさい。」

 ピシャリと言い切られて。
 というより、山田レーザーを撃たれそうだったので、血の池地獄へざぶんと飛び込んだ。

 いつの間にか幽霊は反射的に弾幕回避出来るように成っていたみたいだ。
 判定を見極めてグレイズするのが今後の課題か。

幽霊「おぉぉ・・・?
    この地獄は、なんとゆーか・・・・・・キモチイイかも??」

四季「ふむ。やはり私の裁定は正しかったようね」

 状況がわかってない幽霊をよそに四季はうんうんと頷いている。

四季「血液由来の成分で健康にいいから。この『温泉』。
   特にヘルパーTとキラーTで良い感じに免疫強化。」

 人間や妖怪の基準では『池』でも、幽霊の温度感覚では『温泉』だったようだ。
 そしてこの温泉では血の臭いが硫黄臭の代わりらしい。

四季「生前の厄病をここで落しなさい。
    でないと生まれ変わってもまた病気になるだろうし。」

幽霊「なんか、イメージとずいぶん違うなぁ、地獄。」

四季「生前のイメージはどうでもいいのです。
   さっさと地獄を卒業して生まれ変わりなさい。
   生前の罪を償いきれない『浪人生』を多く持ちすぎても
   私の評判に響くんですから。」

幽霊「・・・もしかして、地獄って実は学校?」

四季「あら、わかってるみたいね。
   地獄は罪の清算という科目を履修して精進努力して、
   しっかりがっつり卒業しなければならない場所。」

幽霊「それで具体的な科目(=地獄=罪の清算方法)を決める
   閻魔様の腕前も問われちゃうんですか・・・タイヘンナノネ。
   出来るだけ早く単位取れるようにがんばってみるけど・・・」

 そう言いつつも、幽霊はちょっとお願いしてみたりする。

幽霊「針山地獄で足裏を刺激するのもなんだか健康に良さそうだよね?」

四季「どっちにすべきかちょっと迷ったのよね・・・そっちの科目も履修しとく?」

幽霊「地獄に長居してもいいなら是非。
    あ、無間地獄でランニングしたりとか、
    八熱地獄で汗流すのとかもいいかも。心肺強化とサウナ効果。
    とりあえず先ずはこの血の池で遠泳してみようかなー」

四季「地獄のつらさも楽しめる所は評価しますが・・・あなたは加減を知らなすぎる。」


**** 卒業しました。 ****


幽霊「まよった。」

 無事に地獄を卒業した幽霊はどこで道を間違えたのか、幻想郷の空へと迷い込んでいた。

妖夢「最後尾はこちらになりまーす。走らないでくださ〜い。低速ボタン〜。」

 どうやら妖夢が他の幽霊たちもまとめて冥界まで案内してくれるっぽいので、列に並んでいたりする。
 地獄に居る間に夏に成っていたらしく、お盆の幽霊大行進と鉢合わせたのだ。

 そうしていると、突然背後から疾走する音がっ!!


文「突撃!『文々。新聞』!!」


 誰かが「取材だー! 逃げろー!」と叫んでいた。

 他の幽霊たちは脱兎の如く逃げ出していた。
 幽霊も逃げる。
 しかし天狗は追いかけて来る。
 他の誰でもない、幽霊を。

 この幽霊は文字通り地獄の猛特訓を修了した、よく訓練された幽霊である。
 幽霊は生前の病気はもとより、四季が指摘した「速さが足りない」も克服したはずだ。
 そして全力で逃げていた。
 幽霊は速かった。速くなった。

 ただ、天狗の足にはかなうはずがなかったのである。

文「はい捕まえた。話を聞かせてもらいますよ〜?」

 文はメモを取り取り、写真を撮り撮り、聞いてくる。

 「この行列は一体ナニゴトなんでしょう?」 という取材として真っ当な質問からはじまって、
 幽霊がここに至るまでの経緯やら、果ては「スポーツの経験はありますか?」とかまで聞いている。


文「実は新聞とは別件で、東方サッカー猛蹴伝に参加するバケバケを募集してるんですよー」

幽霊「東方サッカー?! Σ( ̄□  ̄ ;」

 イイノカヨソノネタ。

文「試しにちょっとここでリフティングをやってみてください。」

 ヤメテクレソノネタハ・・・orz。

妖夢「この幽霊は平気でも筆者がダメなネタっぽいからやめてあげてー」

文「そうは行きません。次回は私も参戦できるみたいだし。」

妖夢「こっちもそうは行かないんです。
   『血の池地獄を泳ぎきって、無『間』地獄を無『限』地獄と間違えて完走した幽霊がいる』って
   幽々子さま期待してるんだから。いい毛玉に育てるんです。」

文「むむむっ。一番速そうな幽霊を追いかけてみたらやっぱり!
  そんなムダな偉業も達成してましたか。
  ますます欲しい逸材に成りました。」

 勧誘を止めさせようとして煽ってしまうあたり、妖夢らしいというかなんとゆーか。
 文も人材(?)の良し悪しの基準を単に速さにしているあたりスピード狂というかなんとゆーか。

幽霊「ちょっとまって〜。私がサッカーやるのはもう確定?」

妖夢&文「うん、確定。」

 なにげに評判のいい幽霊だった。

四季(草葉の影で)「しまった・・・もうちょっと地獄に引き止めておけば
            自動的にチームに引き込めたのに・・・orz」


**** 白玉楼 ****


 結局幽霊がバケバケとして東方サッカー猛蹴伝に出場したかどうかはプレイしてみないとわからないけれど、
 大会が終わったあと。
 白玉楼でもうしばらく幽霊ライフを満喫する幽霊だった。
 今は生まれ変わりの順番待ちである。

 すでに地獄での罪の清算は終わっているので気楽なものだ。

幽霊「マターリ」

 本来この幽霊、のんびり暮らすのが大好きである。生前は「病気だから」地獄では「そういう場所だから」と腹をくくってがんばりまくっていたけれど、
 生前運動をがんばった事が無かったので加減を豪快に間違えただけである。

 白玉楼は居心地が良いので庭のすみっこで漂わせてもらっていたりする。
 自分も勝手にふわふわ出来る姿かたちなので楽チンだ。


幽々子「妖夢〜、よーむー? ゴハンマダー?」

 百由旬先の白玉楼の屋内で、幽々子さまの声がする。

幽々子「妖夢〜いないの〜?」

 そういえば妖夢は今、香霖堂へおつかいに行っていたはず。

幽々子「ぐぅぅ・・・じゅるり。」

 コレは声ではなかった。

幽々子「こ・・・こうなったら、飢えをしのぐために西行妖を・・・あ〜ん」

 ヤバイ。
 もしも完食してしまったら、ただでさえトンデモナイ幽々子さまが更にとんでもなく成りそうだ。
 なんというか空腹のあまりにウロボロス的な魔術を引き起こそうとしている気がする。

 遥か遠くの母屋へ全力ダッシュ。

幽霊「待って待ってー。早まらないでー。
    私がちょっとコンビニ行ってきますから〜」

幽々子「あらそう? 早くしてね? ホントにね?」

幽霊「冥界の運命が地味にかかってるっぽいから、全速力でガンバリマス(`・ω・´)」

 がんばるの好きだなぁ、幽霊。

幽々子「じゃぁ、コレに満載できるくらい買ってきてくれると助かるわー」

 最近幻想郷へやってきたF-14戦闘機を借り受けて、飛んでいく幽霊なのだった。

 なんかシュール。


**** たすけるえーりん。 ****


幽霊「まよった。」

 なにげにこの幽霊は方向音痴だ。
 迷わないようにレーダー性能の良い機体に乗ってみたけどムダだった。

うどんげ「戦闘機?! やっぱり地上の人間が侵攻してるんだーっ!!」

幽霊「うわぁ、いきなり赤眼催眠?! しかもLunatic?!
    ヘタレシューターな私にゃ無理だよー! ブレイク!ブレイク!! 」

 ※それでも必死にタイムアップまで逃げのびました。
 段々芸達者になってくるなぁ、幽霊。


えーりん「戦闘機はともかく・・・ジェット燃料はいつから幻想郷へやってきたのかしら?」

幽霊「燃料無いから私が押してるんですよ?」

うどんげ「それって押すだけ無駄じゃ・・・」

幽霊「いやいや、ムダじゃない。実はカクカクしかじかで、
    ミサイルハンガーにありったけゴハンを積んで帰らないと幽々子さまの
    おなかが落ち着いてくれなそうなんですよー」

えーりん「ノーテンキな冥界が最近更に愉快な事になってるみたいね・・・
     事情はわかったわ。あのハラペコ亡霊のおやつは私が出しましょう」

うどんげ「おやつでも莫大な量になるような・・・」

えーりん「あら、やれる親切はしておくものよ?
      あなた(幽霊)もご苦労様。
      うどんげ相手に9G挙動とかして色々疲れたでしょう。
      お茶でも飲んで元気出して。」つ旦~

幽霊「うぅ、温情痛み入ります」ズズズ

 食料は主にタケノコと餅だった。ミサイルハンガーにはウサギたちが積んでくれた。

えーりん「HUDとレーダーの式もピピッと変えて・・・と。
      ここの印の指す方へ飛べば帰れるから。」

 さすが天才。戦闘機の改良もお茶の子さいさいである。

うどんげ「もうそんな物騒なのに乗って来ないでくれると助かるわ・・・」

幽霊「火急の用事だったから・・・ゴメンナサイ。
    このお礼は幽々子さまのおなかが安定したら必ず〜」

 そう言って幽霊は白玉楼へ帰ろうと飛び立つのだが・・・・


 飛び立った後にえーりんは言うのだった。

えーりん「いいのよ、『もうお礼はもらっているから』」

うどんげ「って、まさか師匠?!」

 人間を不老不死にさせる蓬莱の薬・・・それを『死んだ後の幽霊が飲んだらどうなるか』。
 その実験台に成ってもらう事の報酬が幽々子さまのおやつだったのである。






幽々子「人・・・かしら」

紫「年は妖夢と同じくらいね」

妖夢「出かける前まで幽霊だったのに・・・」


 幽々子のおなかがなんとか落ち着いた頃、幽霊は渦中の『人』に成っていた。
 いつの間にか今までの『つめたいお餅』ではなくなっていたのだった。

幽々子「不老不死の薬は『死なない薬』じゃなくて実は『死んでも蘇える薬』だったのかしら。
     生きてるし。何度か死なせてみたけど戻っちゃうし。」

妖夢「ホントに死なせてましたよね・・・」

幽霊?「その度に生き返っちゃったし。困ったなぁ、幽霊に戻れない。」

 今までのように庭のすみっこで浮いて暮らすわけにも行かなくなってしまった。

紫「それなら早くここから立ち去った方がかもね。重いでしょ、肩とか腰とか」

幽霊?「実は節々もビミョーに痛かったり・・・」

 冥界は生きとしいける者からすれば生気が薄すぎる。
 薄い生気は人から生気を奪う。
 だから体にダメージが来る。
 蓬莱の薬で無限再生したとしても、飲んだ本人の格が下なら常に耐え続ける事は出来ない。
 それを紫は指摘しているのだった。

幽霊?「生まれ変わる前に生き返るとは思わなかったけど、
     お暇させてもらいますー。今までお世話に成りましたー。」ペコリ

 蓬莱の薬を飲んでしまった以上、多分もう死ねない。
 ここへ来るのはもう二度と――

幽々子「――妹紅の半分くらいしぶとくなったらここも平気に成るでしょう。
     そうなったらまたいらっしゃい。
     永琳のとは違うちゃんとしたお茶くらいは振舞うから。妖夢が。」

妖夢「私が・・・ですよね。」

幽々子「あの世とこの世の境界も曖昧なままだし・・・紫、こういうのもアリよね?」

紫「地獄の裁判はもう二度と受けないでしょうし、好きなように。
  あなたも身の振りを決めるまでの間は『こっち』に入ってなさい。」

 お茶の間にスキマが出来た。


**** マヨヒガ ****


藍「ふむ・・・今後の身の振りか・・・
  紫様は寝てしまったし。私達が相談に乗るしかないか。」

橙「みのふり?」

藍「幽霊?がこれからどうしようって話。」

幽霊?「とりあえず、疑問符つきの名前をどうにかしたいような・・・」

藍「それはダメだ。名前は今後の人生に大きく影響する強力な結界に成る。
  とりあえず程度でなんとなくつけてはいけない。
  紫様たちも呼びづらいからって、適当に名前をつけたりしなかっただろう?
  それはキミの今後を案じての事なんだ。」

橙「適当に出身地とか番号で呼ばれてタイヘンな妖怪や妖精もいるし。」

藍「スペカの名前で人格を曲解されてタイヘンな式神もいるし・・・orz」

幽霊?「うどん好きの兎もいるし・・・色々タイヘンなんだ」

藍「だけど名前・・・『誰もが持っている強力な結界』が無いキミもタイヘンだ。
  話が振り出しに戻るけど、どう身を振るかを決めなければ名前は決まらない。
  逆にどうありたいか身の振り方を決めたなら、
  今後どうするのかも自分の名前もおのずと決まる。
  それを決めるのが生き返って最初の大仕事だね」

幽霊?「なんかムズカシイっすー」

藍「要はキミがどうしたいのかって事だけなんだけど、
  今のキミって『名前をどうにかしたい』としか思っていないのかな」

幽霊?「そういうわけじゃないけど、どう言葉にしたらいいのやら」

藍「人の本質に関わることだからなぁ・・・」

 そんな事を話していると、

橙「なんかつまんなーい。それよりあそぼ!」

 幽霊?の手を引いて外へ行こうと誘っていた。

幽霊?「こういうのは、アリ?」

藍「アリじゃない? 決められないときに決めようとしても埒も無い。
  存外あっさりと決まるもんだよ。その人に本当に必要な事なら何だって。
  結界も式も人間も、そーいうもんだ。」

 そう言うと藍は「私はゴハンの準備するからあそんどいで」と土間の方へ行ってしまった。

橙「それじゃあ最初はサッカーやろ!!」

幽霊?「・・・orz」

 回る猫と遊ぶのはなにげにタイヘンだったが、楽しいひと時でもあった。

 サッカーに飽きたら鬼ごっこをして、次はかくれんぼ・・・

 そうこうしている間に外で遊んでいたのがマヨヒガの中へと戻って、じゃあ今度は折り紙をやってみようという事で、橙にかぶせる兜を折って――

幽霊?「これって・・・」

 折り紙の材料だった新聞に目が留まった。

橙「どうしたの?」

幽霊?「ここ、行ってみたいかも。」

 その新聞のすみっこにはこうある。

 【紅魔館・妹様専属メイド急募。不死身の方優遇。詳しくは担当・十六夜まで】


藍「遊んでヒントが見つかったのかもね。
  もし行くにしてもゴハンを食べてからにしてくれないか?
  キミの分まで計算して作っちゃったから。」


**** 紅魔館 ****


幽霊?「ごめんくださ〜い。」

中国「はいはいただいま〜。どちら様?」

幽霊?「チラシを見て来た幽霊?です。」

中国「人間なのに『幽霊』って名前だなんて・・・不憫な子もいるのね」

幽霊?「いやいやそうでなく。元幽霊で、今は名前が無いだけで・・・」

中国「なんとっ?! 名前で呼んでもらえないだけでなく、そもそも名前が無い?!
    幽霊?さん、なんだかとっても私の地位が危ない感じがふつふつと・・・!!
    たとえるならそう! 全国大会の後、世界大会で若○津君がスタメン入り
    したときの森○君のような――ッ!!」

 サクッ。

 美鈴の額の星印のアレから音がした。

咲夜「マッドサイエンティストの実験結果がこんなところに・・・
    幻想郷の巡り合わせも分からないものね」

幽霊?「やー、生き返らされたときは、どうなる事かと思ったよー。
     ――て、私の事知ってる?!Σ( ̄□  ̄ ;」

レミィ「ブンスポで見たのよ。
    西行寺チームのバケバケが永琳の実験台にされて
    やむなくグラウンドから退いたとかナントカ。
    なにげに順応してるみたいね・・・」

 ※ブンスポ:『文々。新聞スポーツ版』の略。
   主に東方サッカーの記事を扱ってるかも知れず。

幽霊?「天狗のカメラは一体どこまで憑いて来るんだろう・・・」

レミィ「運命ね。あきらめなさい。」

幽霊?「このヒトに言われちゃうとホントに諦めるしかなさそうだし」

咲夜「これから雇用主になるお嬢様に向かって「このヒト」は失礼じゃない?」

レミィ「良いのよそれで。チラシ通りの目的で来てないから、この子。」

幽霊?「単に【不死身の方優遇】ってのが気に成って遊びに来てみただけだったりします。
     そんなわけでお邪魔しまーす。妹様〜遊びに来たよー。」

 どんどん弾幕耐性が着いていく幽霊?である。


咲夜「この館もそう易々と来れる場所じゃないはずなんだけど・・・
   永琳が一服盛ってみようと思った理由が分かった気がするわ。」

レミィ「咲夜も気付いたのかしら」

咲夜「丈夫そうだから色々試したくなるなーと。」

レミィ「気付いたのはそっちか。たしかにあの子は丈夫ね。
    ただでさえ頑丈な幽霊が蓬莱の薬を飲まされたから『結構』どころじゃないわ。
    フランの相手にはうってつけなんだけど。メイドには成らないでしょう。
    言ったとおりにただ遊んで帰るだけよ。そういう運命が一番丁度良い。」

咲夜「好き好んで妹様と真正面から遊んでくれるならそれはそれで助かるけど」

レミィ「でも、やっぱり何か試してみたくなるわね・・・」

 なにやら仕組んでるっぽいレミリアお嬢さまだった。


**** EX:香霖堂 ****


幽霊?「すみませ〜ん、テオ○ングとかテオド○ルとか、ありますか〜?」

こーりん「何だいその手長足長の盆踊りみたいな名前は。」

妹紅「外の世界の喘息の薬だそうだ。
    あったら買って来てくれって喘息持ちが言ってたんだよ。」

こーりん「手長足長が喘息を治す・・・?
      ちょっと興味がわいたけど、残念ながらここには無いね」

幽霊?「やっぱり無いかー。パソコンはあるのに。それより・・・」

妹紅「おぉ、そうだったな。吸血姉と喘息持ちが言ってたアレ、ありそうか?」ガサゴソ

 香霖堂を家捜ししはじめる幽霊?と妹紅だった。

 ちなみに妹紅とはフランドールの部屋で行き会って以来ここまで一緒だったりする。
 妹紅もなんとなく自分の後輩っぽい幽霊?の面倒を見るのはやぶさかではなかったっぽい。

 いろんなところで可愛がられてるなぁ、幽霊?。
 単にめずらしがられてるだけかもしれないけど。

こーりん「おいおい、大事な売り物をぞんざいに扱わないでくれよ」

幽霊?「このタイヤ使えそうだなー。あとは・・・っと」ゴソゴソ

こーりん「おーい、ヒトの話を聞いてくれー」

妹紅「聞いてるから。それに壊してない。探してるだけ。」

こーりん「一応壊してないみたいだし、良しとしよう。
     それで何を探してるんだい? 売り物が欲しいなら言ってくれれば――」

幽霊?「探してるもの自体はなんだか無さそう。
     だから、部品を集めて作っちゃおうかなーと。」

妹紅「鴉も協力する気満々だったし。
    天狗の業が加われば先ず大丈夫だろう。」

 焼き鳥ネタで脅されてない事を祈る。

こーりん「なんだか要領を得ない会話だなぁ。
      じゃあ質問を変えよう。君たちは何を作ろうとしてるんだい?」

幽霊?「一応荷車・・・なのかな?
     飛んでも落っこちないやつで、物騒じゃないやつ」

妹紅「材料費は出世払いだ。絶対成功するからダイジョーブ。たのむぞ、な?」

こーりん「なんだか微妙に脅迫めいた商談のような・・・?」

妹紅「脅迫とは失礼な。事業立ち上げの根回しだよ。」

こーりん「なるほど、作るのはこれからやる仕事に必要なものなんだね。」

妹紅「そういう事だ。だからコイツを今助けてあげた方がいい。
   タイヘンな亀を助ければ竜宮城へいけるけど、無事な亀を助けても竜宮城へは行けない。
   今回は前者だ。ありがたがられるぞー。」

こーりん「リスクもまた比べ物にならないけどね。それに玉手箱は要らないよ。」

妹紅「今回はそのリスクが君がツケにしてやるだけで消えるんだ。
    玉手箱は開けずに店の売り物にすればいい。
    こうなればやらない手はないだろう? だからツケで。」

こーりん「だまされてる、だまされてるぞ・・・」

妹紅「この書棚はよく燃えそうだなー」

 結局「ツケでイイヨ」と言ってしまう霖之助だったとさ。
 後に霖之助はこの取引の事をこう語る。

こーりん「ツケにしたのはその後詳しい話を聞いて興味がわいたからだよ。純粋な好奇心。
      脅迫はされてない。うん、されてない。」

 どこまで本気なのか分かったもんじゃなかった。


**** PH:博麗神社 ****


魔理沙「霊夢の暇つぶしに付き合ってやろうと来てみたら・・・新聞が届いてるな。
     えーなになに・・・」

 【謎の空中料理人・幽霊?がはじめた宅配ピザ屋が好調】
  〜要望によりお好み焼きも可能に。次はたこ焼きか? 焼き鳥はやめて〜

  先日八意永琳(人間[自称])の実験台にされた幽霊?(元幽霊)が宅配ピザ屋を開業し
  た。あまり外へ出られない喘息魔法使いや、あまり外へ出ようとしない引き篭もりの姫、
  ほとんど外へ出してもらえない妹、外には出るけどおなかが空きやすい亡霊などから
  好評を得ている。最近は顧客の要望に応えるため他の料理も作り始めていて、何屋さ
  んなのか分からない様相を呈している。流石は元幽霊、風に流されるままの経営方針
  である。幽霊?は語る。「気付いたらいつの間にかこの仕事に就いていた。後悔はして
  いない。なんか楽しい」更に取材を続けると「冥界から注文がきた」と荷車に料理を満
  載して飛んで行った。速さは我々天狗には及ばないものの、七日七晩宴会を続けられ
  そうなたくさんの料理を一度に運ぶさまはなかなかに豪快である。ちなみにその荷車
  (曳航(エイコウ)させて飛ばすグライダーだ)の作成は私も手伝わされた。積載量は前述
  の通りかなりのものだ。物を運ぶ程度の能力を活かしたこの新事業、今後の展開に
  期待である。 (射命丸 文)

魔理沙「また変なのが出るようになったもんだ。
     片棒担いでる鴉が好調って書いてるのがウサンクサイ。
     おーい霊夢ー。こいつ見たことあるかー?」

霊夢「見てないわね。でも記事が多少ホントならすぐに見かけるんじゃない?」


 そんな話をしているときだった。


幽霊?「ちわーっす! 幻想デリバリーですー。酒の肴を持ってきたよー」

魔理沙「ホントに来たし・・・霊夢が注文したのか?」

霊夢「してないわよ。でも来るでしょうね。どうせここが宴会に成るんだもの。」

幽霊?「受け取りのハンコもらえるかな。サインでも可。」

霊夢「はい判子」ポン

魔理沙「料理があればお酒が欲しくなる。お酒と料理があれば話し相手が欲しくなる・・・
     誰も考える事は似たり寄ったりか。」

霊夢「この子に運ばせた連中もそろそろ来るんじゃない?」

 参道にチラホラと人影や人じゃない影が見え始めていた。

霊夢「ところであなた、名前は?」

幽霊?「え? 名前は――」

 そして宴会の『いつものあいつ』の名前がまた一人ぶん増えたのだった。


 おしまい。