『りりうむぱんつかえして』アーマード・コア フォーアンサー(ACfa)SS
**** 注意 ****
先ずはじめに謝っておくべきことがあります。
下品な話題で申し訳ございません。(特に序盤)
どうぞ食後に閲覧ください。食べながらダメ絶対。
『私』からのおねがいです。
なお、作中文章は女性ボイスで脳内再生すると後々しっくり来るかもしれません。
**** 起 ****
主に単機で作戦行動を行うリンクスにとって、共通するひとつの悩みがあった。
トイレである。
いつ襲撃を受けるか分からない輸送部隊の護衛で何時間もネクストを操縦しながら待ち構えたり、力量差が拮抗した相手と数十時間に渡って戦闘を繰り広げたり・・・
仕事をこなしていると「ちょっとトイレ」と席を外せない場面は結構ある。
間抜けな悩みだがパイロットにも整備士にも死活問題だ。
ムサ苦しいおっさんがいろいろぶちまけたコクピットを整備させられて心的外傷後ストレス障害を患った整備士もいれば、ネクストの強烈な加速Gで腹圧性尿失禁症を発症してしまい恥ずかしさのあまり二度とネクストに乗れなく成った女性リンクスもいる。
更には、そんなリンクスたちの下の事情でネクストが出撃できない隙に襲撃を受けて陥落した施設・拠点は数知れず・・・となれば企業も動かざるをえない。
そんなわけで主にコアパーツ製作企業各社ではパイロットの下の世話を円滑に行えるコクピット・パイロットスーツの研究開発を日々行っている(キリッ
兵器の歴史を紐解いてみれば、戦車や戦闘機など乗員が少数名の戦闘機械でもトイレを搭載しているものは探せばある。が・・・速さが命のネクスト戦ではいちいちシートから立って用を足す暇もなければ場所もない。それにネクストがクイックブーストやオーバードブーストで一気に加速すればトイレなんてペヤングだばぁ状態だ。トイレ設置は無理。
となると簡単な方法はおむつの着用で一時期はそれが主流だったのだが、高加速度・高重力下の戦闘ではおむつにとんでもなく高い圧力がかかってしまい極めて不快だった。
圧力でおむつの中から光が逆流してパイロットスーツの中全体がにゅるにゅるの大惨事。
立体サイドギャザーごときでは防げねぇ。
不快のあまりAMS適正が下がる者まで出る始末だ。
おむつも出来れば使いたくない。
試行錯誤の中、クレイドルに使われている汚水再処理用のバイオプラントを小型化したものを尿道と直腸内部へ装着してクリーンな廃液を専用パックに収納させるというバイオカテーテルシステムなるものを開発した生物系変態企業もあったが、そのカテーテルはぶっちゃけ見た目が触手だった。うねうね動く。
触手な事さえ除けば極めて優秀な製品で影のヒット商品だったりする。YARCA旅団などは上お得意様だ。ゲイヴン・百合ンクスに大人気。(カスタマーアンケートでの回答では一様に『具合がいい』とのこと。何が、とは言わずもがな)
触手が現行技術ではベストなのだが、わりとまともな人格の持ち主にはこの方式は破滅的なまでに不評だった。男女問わず泣いて(時にはVOBでガン逃げして)使用を拒んだため別の方式も考案しなければならなかった。チェッ
結局はパイロットスーツの股間部に耐G構造の逆流防止機構を備えた簡易トイレユニットを設置する事で従来のおむつよりは多少快適な使い勝手を得ている。
**** 承 ****
カラードランク2、リリウム・ウォルコットもネクスト搭乗時には股間に簡易トイレを装着する。
まことに遺憾ながらキサラギ製バイオ触手ではない。
でも股間に簡易トイレ。
ぱんつはいてない。のーぱん。りりうむのーぱん。
ぱんつはいてないからはずかしくないもん!!
――ハッ?! 申しわけございません。取り乱してしまいました。
普段のリリウムは任務を終えると人知れず簡易トイレを処分してシャワーを浴びて、私服へ着替えて・・・という手順で仕事モードからプライベートへと移行するのだが、今日はちょっと様子が違った。
自分のロッカーを開けて愕然とするリリウム・ウォルコット。
理由はただ一つ。
ぱんつがない。
任務中はいつもここに仕舞っているのに。
まさか王小龍の仕業・・・?
一瞬思ったが違う。
あのじーちゃんは全身がモーロクしたせいで本体は実はジェイムスン型の義体だ。ネクストも義体もAMSで動かしている。
ジェイムスン型のちっちゃい四角い義体ではリリウムのロッカーにアームが届かない。
(長い人生いろいろあって心が捻じ曲がっちゃった可哀想なじーちゃんなのだ。可哀想なのでせめて敬うくらいはしてあげないと。・・・敬う以外何もしてない気がするけど。)
では誰がやったのだろう?
整備士やオペレーター、仲介人などが犯行に及べるかといえば無理だ。
リリウムが自らアセンブルした更衣室のセキュリティは難攻不落にして質実剛健そして何より物騒だ。
忍び込もうものなら実寸大のリリウムレーザーで更衣室ごと犯人を焼き払う。
盗まれるくらいなら何もかも消し飛ばした方がマシという気前のいいセキュリティである。
良い報酬を貰っている高ランクリンクスでなければできない荒業だ。
そんな物騒な仕掛けがリリウムの更衣室にある事は誰もが知っていた為、近寄る者なんてだれもいない。
あそこに侵入するくらいならネクストかアームズフォートを使って更衣室ごと強奪する方が手っ取り早い。
だが、実際はそうはなっていない。忍び込まれてぱんつ盗まれてる。
じゃあ誰、いえ、『何処』がこんな事を――?
このドアの複雑でリスキーなセキュリティを破ったあたり確実に組織立って犯行に及んでいる。
何処の仕業だろうかと考える。
スースーする股間にそわそわしながら視線を巡らせて・・・一枚の紙切れに目が留まった。
どうやら手紙のようだ。
『拝啓、のーぱんのみぎり時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、弊社ではランクマッチ戦闘記録観測システムの開発において不可欠な情報資源を貴女が所有していることを突き止めました。
りりうむぱんつ。速やかに実力で奪取させていただきました。敬具』
ランクマッチ云々を動機に上げるという事は犯人はカラードか。
手紙の用紙はカラードが公的文書を作成するときに使っているものだ。
わざわざ挑発するとはよほど奪還されない自信があると見える。
更衣室の回線でオペレーターへ連絡する。
手紙に使われていた用紙に張り付いているカラード発行のシリアルナンバーチップが有効かどうか確認させる。はいはい、今調べます。
確認の結果は有効。生きたナンバー、効力のある手紙だ。
偽造されたニセモノや、紛失や盗難で失効されたものではない。
つまり『確かにそれは我が社がご用意した文書です。ニヤリ』というわけだ。
他社がカラードになりすまして情報工作をしたとかそんなまだるっこしい事態ではなかった。
ただ、カラードは本当にりりうむぱんつを無傷で完璧な状態のまま手に入れたかったようだ。
ネクストも使わず、極めて危険な更衣室へ諜報員を忍び込ませてぱんつを盗み取っている。
リリウムがいかにカラードに属しているとはいえて盗んでいいわけがない。明確な敵対行為だ。
ドアの開閉ログを見るとリリウムが出撃している時間に彼女本人が入室したという表示が残っていた。ぬかったな諜報員。思わず霞スミカさんを真似て男前にセリフを言いたくなってしまう。
ログの様子からして留守の間に更衣室のドアの生体認証を正々堂々とクリアして入室している。網膜パターン・声門・指紋・掌の静脈パターン、果てはAMS適性値まで使ってリリウム・ウォルコット以外は侵入させないドアロックシステムなのに。
まさか下着だけでなく細胞までどこからか採取されてクローンを作られてしまっていたのだろうか?
なにせ更衣室の鍵はリリウム本人なのだ。なら、その鍵を複製すれば扉は開く。
簡単で合理的、この業界の人間が好むやり方だ。
細胞を採取された場所は・・・下水か? 確か数ヶ月前に下水配管に設置してあったセントリーガンの弾薬が消費されていたがその時にでも配管に細工をされたのだろうか?
排水と言っても侮れない。
例えばハミガキの時に口をすすいだ水には活きたままの頬の粘膜細胞がごく少量ではあるが含まれている。歯茎から血が出ていたら奴らは喜んでそれを採取するだろう。
洗面所の配管内部に小型ロボットを忍び込ませて新鮮な排液を採取したというのが妥当なところか。
そして排液からリリウムの細胞が特定されてナニカサレて、認証クリアのための鍵としてクローンが作られて・・・
ドン引きするくらいヤな感じだ。企業が本気でストーカーをやるとたちが悪い。
「・・・・・・・・ゾクッ」
無意識にもう少し先のことまで考えてしまって、リリウムは更に怖気が走った。
現行のクローン技術と代謝促進技術を駆使しても、脳細胞の発達までは制御できない。
仮に制御できたらAMS適正だって人為的に向上できるがそんな都合の良い事がうまく行った試しはない。
クローンリリウムはナニカサレタら体はオリジナルと同じくらいに成長できる。鍵はそれで開く。
だがその子の脳は赤ちゃんのままだ。
リリウムと同じ背丈にまで育ったおっきな赤ちゃん。
その子を見知らぬ誰かが面倒見ている。
ちゃんと自然に成長した自分でもハァハァした視線には困っているのにクローンはノーガード。
いまごろ上も下もよだれを垂らしたあられもない姿を衆目に晒しているに違いない。
リリウムは更衣室の鏡を見つめる。この顔と同じ子が・・・
「生後数カ月のリリウムが誰かに上も下も色々お世話されて・・・じゅるり。
――その子に色々していいのは私だけですっ! 理由はお分かりですね?!」ハァハァ
新しい簡易トイレパックを装着しながら整備ドックへ回線を開いて音声だけで短く告げる。
「出撃します」(キリッ
コジマ汚染はこんな所にまで広がっているのかもしれず。
**** 転 ****
カラードランク1、オッツダルヴァは本日この時カラード防衛の任務を請け負っていた。
・・・カラード、次の手打ってたよ。
報酬が尋常じゃなく高額だったのがオッツダルヴァには胡散臭かったが、
「貴方様にお願いするからにはこれくらいは見積もらないと悪い話になってしまいますので・・・」
と下手に出まくる仲介人の態度であっさり納得していた。
「そういう事なら引き受けてやろう。フフン」
と、いつものように高飛車に依頼を受けつつもどこか満更でもないご様子。
しばらく待機して、レーダーが機影を捉えた。
機体はもちろんアンビエント。カラードランク2、リリウム・ウォルコットだ。
「ふん、誰かと思えば貴様――あ?」
コクピット越しでも伝わるただならぬ雰囲気でオッツダルヴァの言葉が止まる。
「貴方も関与していたのですね・・・
私の赤ちゃんとぱんつかえしてください!!」
「ちょ、ちょっと待て!何の話だ?!」
「赤ちゃんとぱんつの話です! ここに居る以上知らないとは言わせません!!」
突然の濡れ衣で慌てて声を張り上げる乙樽。
それもそのはず、リリウムは無線通信ではなくアンビエントの拡声機を使って、カラードの職場はもとより作戦区域全域に響き渡るように声を大にして高らかに言い放ったのだ。
赤ちゃんとぱんつかえしてと。
「わたしの、わたしのぉ・・・」シクシク
アンビエントが泣き崩れている。
ノーマルの皆さんがオロオロしながら現状を理解しようと頑張っている。
リリ様そんな可愛い声で子供いるの?→ 乙樽がリリ様孕ませやがった→ しかも別れて子供をどっちが引き取るかで争ってる、とフロム脳から妄想が逆流する。離婚した夫婦の子供をめぐる修羅場みたいな勘違い。
もちろんリリウムの「クローンの」赤ちゃんであり、リリウムの「産んだ」赤ちゃんではないのだが、一言足りないだけで妄想カーニバル、いわゆるピンチです。
風評被害は独り身の男にはコジマキャノンに匹敵する攻撃だ。
下手に悪い噂が広まったら嫁さんが貰えず家庭を作れず老後や死に様にまで響くダメージになる。
40年後のさびれたアパートの片隅で異臭騒ぎが起きたと思ったらかつてのカラードランク1オッツダルヴァの亡骸だった・・・という未来に成りかねない。
地獄の底からおいでおいでと筆者がオッツダルヴァを手招きしている。なにこれこわい。
アンビエントの拡声機からはシクシクと泣きじゃくるリリウムの声。
一緒に防衛任務に就いているノーマルのみなさんの視線が痛い。
どこからか「なーかしたーなーかしたー」と茶々を入れる声が聞こえるような気がする。テルミドールか?
いたたまれなくなったオッツダルヴァは、
「てれってれっとぅ〜ん」
自ら海中へボッシュート。存外深く潜れる男である。
そろそろ彼にズゴックを与えるべきではないだろうか。
と、その時。
突然の閃光がカラードのノーマルを射抜いた。
いろいろダメな感じだったがここは戦場だ。
リリウムは目に涙をいっぱい溜めながらもレーダーを確認する。
そこには、VOBを使っても成し得ない程のありえない速度と小回りで急接近する所属不明のネクスト機体。
立て続けにクイックブーストを噴射して高速移動を繰り広げるその挙動はとてもじゃないが人間業ではありえない。
まさか、これが噂に聞く所属不明の進化するAI機、
「ラインの乙女――?」
リリウムの独白に乙女の機械仕掛けの瞳が輝きで応えたような気がした。
身構えるリリウムだがそんな彼女には構わず、乙女はカラードのノーマルを薙ぎ払う。
一瞬の出来事だった。
乙女が通過した衝撃波がアンビエントの機体に伝わる頃には既に辺りは灰燼に帰していた。
機影はすでに遥か遠くの光の一点としてしか見て取れない。
無傷な場所はリリウムと――カラードの建造物のごく限られた一区画だけだった。
カラードは後に事のあらましを知って酷く後悔することになる。
『りりうむぱんつ』はリリウムのぱんつの事ではなく、戦闘記録観測システム用の『ソフトウエアの名称』だと言うこと。その単純な誤解が御社を壊死させるのだと。
『ラインの乙女』と『りりうむぱんつ』がいかなる勢力によるものなのか、当時はまだ知られていなかったのだ。
今ではぐぐればちょっと分かる。あれはすごい。
**** 結 ****
予想外の事態もあったがリリウムはぱんつを奪還した。
乙女が的を外してくれていたのだ。
そのぱんつが何の洒落っ気もない古風な白い布切れ(日本の女子中学生が学校へ着ていくようなの、上下セットで¥398くらい)だったというのは私たちだけのひみつだっ。
「はーい『りりうむ』、ごはんですよー」ハァハァ
「あーい」
クローンも同時に奪取して『りりうむ』と名付けて(?)リリウムは世話を焼いている。
なんというか、ウォルコット家は近親に惹かれる星の下に生まれているらしい。
『りりうむ』の方もリリウムに良くなついている。そういう天性なのだろう。
「これでクローン三人目ですね・・・」
機体のアセンブルを担当したり、たまにリリウムに代わって出撃してくれている『あなた』が言った。
「そうね『Lilium』何か複製したくなる原因でもあるのかしら・・・『理璃卯夢』はどう思いますか?」
オペレーターを務めている『私』に話を振るリリウム。
「そんなにあのセキュリティを破りたいのでしょうか? よくわかりません」(←内心よく分かってる)
あなたは『Lilium』、私は『理璃卯夢』 読み方は全部リリウム。
私たちは『りりうむ』と似たような経緯でリリウム・ウォルコットから複製されたクローンだ。
お互い生後数年、体が学習適正年齢に入った時に一気に脳が成長した。
実務をこなせるだけの力量があるためリリウムのサポート業務に貴女も私も就いている。
片手で収まる年齢の私たちでそんな仕事ができるように成った原因は・・・複製元の彼女の資質を私たちも受け継いでいるからなのだろう。
更衣室と同じセキュリティが施されたリリウムの私室に私たちはいる。
この部屋には【リリウム】しか立ち入ることは出来ない。
「だ〜ぁ☆」
『りりうむ』が私にじゃれ付いてきた。
面倒を見ていた『リリウム』は? と思ったら、貴方の膝の上で寝息を立てている。
内容はどうあれ一日に二度の出撃をこなしたのだ。無理もない。
じゃれつく『りりうむ』の相手をしばらくして・・・貴女が声をかけた。
「こうしていると、変わりませんね」
貴女は私の膝の上を指差す。
そこには遊び疲れた『りりうむ』の、安心しきったゆるい寝顔・・・
私は貴女の膝の上の寝顔と見比べる。
「ええ、本当に」
こうして寝顔を見ているとちょっとやましい気持ちに成ってしまうけど今はガマン。
だってこんなにも安らかに、無防備に、『リリウム』が眠っているのだから。
『りりうむぱんつかえして』 完